頭の中に、もう一つの世界を持てる幸せ

小説を読んでいる瞬間は、とても幸せなものです。幸せな小説を読んでいるときには限りません。どんな物語でも、その物語の中に没頭している瞬間というのは、私にとって、これ以上ない幸せな瞬間なのです。どうして幸せな物語以外でも、幸せを感じることができるのか、ということには、疑問を覚える人も少なからずいるでしょう。でも、私が感じている幸せとは、現実という世界から抜け出して、夢の世界の中にどっぷりとつかっている、ということに対して抱いているものなのです。この世界ではないどこかに旅立っている、その感覚が、何物にも代えがたい幸せを、私に与えてくれます。私は、その小説を読んでいる間だけ、私ではなくなります。僕にもなりますし、俺にもなります。私ではない誰か。それに、私はその瞬間だけは、なれるのです。刑事にも、高校生にも、イケメンにも、美女にも、私は、なれるのです。主人公に、なれるのです。ふつう生きていて、そんな経験というのは、なかなかできるものではありません。何かに縛られ、何かに追われ、明日にも希望を持つことができない、そんな日々の中に身をうずめている時期も、あります。そんな時ほど、何物にも縛られないもう一つの世界の中は、私を魅了します。そこに逃げ込めば、誰も傷つけることなく、私だけが主人公として、世界の中に踊ることができるのです。ここにしかない日常を歩み続けるというのは、苦しいものです。逃げ場所を、どこかに見つけるというのは、私たちが生きていくうえで、必要なことなのかもしれません。毛深い原因が知りたいです。